常に美を追求する心は、破壊や朽ちるといったマイナスのイメージからさえも美を見いだし、心地良いバランスを見つけようとしている。「クリエーションするって、そういうこと。」と小篠弘子は語ります。
未曾有の大震災からはや3年。多くの命を奪った惨禍の意味を、そして一人一人の命の重さを改めて胸に刻み直すかのように、破壊された中から探し出す美。今回発表する作品には、そういった思いを伝えたい、表現したいというメッセージが籠められています。画面を駆け巡る紙の皺や、ぐちゃぐちゃに流された絵具は崩壊のイメージであり、そこから尊い美を探し出そうとする姿勢は、深く渋い色味から、徐々に暖かく春を予感させる色調まで多彩な様相を見せてくれます。
巧みな料理人がレシピをつくるかのように、自ら試行し研究した技法を自由に駆使することの自信に満ち溢れた今回の新シリーズをどうぞご高覧下さい。
WORK #1170, 2014, 91×116.5cm
数ヶ月毎にパリを訪れる小篠弘子は、ある日、黒田アキ(本名、黒田明比古)という人物に出会いました。黒田は小篠と同じく関西の出身(1944年、京都生まれ)で、パリ在住44年を越える現代美術のアーティストです。以前よりその名を耳にしていた小篠でしたが、黒田のアトリエを訪問し、その仕事の幅広さや奥深さ、多彩な交友関係を知れば知るほど驚きました。これ程までにパリという都市やフランス文化に溶け込み、活躍して来た日本人がいただろうかと。
黒田のアトリエは、エコール・ド・パリの芸術家達が集ったモンパルナス界隈にあります。仕事の合間に通うカフェで、黒田は様々な人に出会い、世間話をし、冗談を交わし、スケッチを描くのです。カフェはふと思いついたことを描きとめるのに一番適した場所であり、創作の原点でもあるのです。そんな黒田が長年取り組んできた「宇宙庭園=コスモガーデン」という概念はカフェから生まれたといっても過言ではありません。人と人が出会う場はとても重要であり、その出会いが作品を生み出して来たのです。広大な宇宙の中では小さな存在に過ぎない人間が出会い、思考し、行動し、互いに共生的な庭をつくっている。それが「宇宙庭園=コスモガーデン」だと黒田は考えているのです。
これまで数多くの出会いを経験し、その度に新たな世界を切り開いてきた小篠弘子にとって、こうした黒田の思考は共感できるものでした。すっかり意気投合した二人が一緒に展覧会を開こうと思い立つまでに多くの時間は要しませんでした。黒田アキにとって、今回の展覧会は日本における久々の本格的な発表の機会となります。小篠弘子という個性溢れるパートナーを迎え、いったいどのような「宇宙庭園=コスモガーデン」」を創り出すのでしょうか?二人の出会いが生み出す鮮烈なスパークにご期待下さい!
黒田アキ (本名、黒田明比古・くろだあきひこ)
1944年、京都府生まれ
黒田アキは1980年にパリ国際ビエンナーレに出品し、間もなくマチスやミロ、ジャコメッティを世に送り出したマーグ・ギャラリーと専属契約を交わす。ヨーロッパ各国で数々の個展を開催し、日本では1993年に東京国立近代美術館において、当時最年少で個展を開催。また翌年にはサンパウロ・ビエンナーレに参加し世界的な評価を受けた。安藤忠雄やリチャード・ロジャースといった建築家とのコラボレーションなど、他分野との交流も多いアーティスト。
小篠弘子
1937年、大阪府生まれ
祖父の影響で幼少時より美術や伝統芸能に親しみ、大阪府立岸和田高校在学中に美術部で絵画を学ぶ。高校卒業後に上京し、文化服装学院でデザインを学びつつ、スタイル画の大家、原雅夫氏に師事。デザイナーとして第一線で活躍する傍ら、水墨画や書画の制作に取り組んできた。近年はテキスタイルなどさまざまな素材を用い、新たな手法にも挑戦しつつ、表現の幅を広げている。
パリ・黒田のアトリエにて
KHギャラリー銀座
間もなく開廊一周年を迎えるKHギャラリー銀座。これまで3回の展覧会を通して、アーティスト・小篠弘子の作品を紹介してまいりました。
今回のテーマは「ザ・ゴールド」。昨年生誕150周年を迎えた象徴主義の巨匠グスタフ・クリムトの色づかいに触発され、更にカラー・ジェッソという新しい画材と出合ったことで、新たな表現領域に踏み込むことができました。世紀末のウィーンで活躍したクリムトが、尾形光琳をはじめとする日本の琳派や、黄金に輝くエジプト美術に強い影響を受けたことは広く知られていますが、東洋と西洋の境界を飛び越え、融合させて来た小篠にとって、クリムトの金を基調とした色彩感覚には共感するところが大きかったようです。
金と墨、和紙と布など、多様な素材を自在に組み合わせた作品の数々は、そのどれもが東洋的とも西洋的とも取れる妖しい輝きを放っています。金色に魅せられた小篠の新たな展開をご高覧下さい。
WORK #1087, 2013, 77.5×54.5cm
銀座・並木通りのKHギャラリーでは、アーティスト・小篠弘子の作品を季節ごとに切り口を変えてご紹介しています。
第3回目となる本展では、新たな試みとして備前焼の陶工・太田篤氏の作品を交え、墨と土による和のコラボレーションを展開します。
勢い溢れる筆の勢いが特徴的な小篠弘子の墨の作品には、余白の響きが感じられます。一方、大胆な曲線が印象的な太田氏の陶芸作品からは、柔らかなかたちの余裕が感じられます。そしてこれらの作品が共鳴し合うように展示されたギャラリー空間には、日本の伝統的な自然素材が生み出すもうひとつの余白が広がることでしょう。今回の展覧会では、どうぞこうした余白の響きをご堪能ください。
WORK #1035, 2013, 53×53cm
今年9月に銀座並木通りにオープンしたKHギャラリー。
おかげさまでオープニング展は、さまざまなメディアに取り上げていただき、多くのお客様で賑わいました。
2回目となる本展では、引き続き精力的に制作を続ける小篠弘子の新作を展示します。
今回のテーマは、「幻想の庭」。この物語のようなタイトルから、皆さまはどんな情景を思い浮かべるでしょうか?
新たな素材や技法に取り組みつつ、前回とは異なる作風を披露すべく描かれた画面には、抽象的な表現の中に鳥や生き物たちのシルエットが見え隠れしています。また、本展の会期中に年末年始を迎えることから、墨と銀箔による「干支シリーズ」を併せて発表します。ご来場を心よりお待ちしております。
WORK #1017, 2012, 150×101cm
2012年9月8日、銀座並木通りに、小篠弘子のアート作品を展示するKHギャラリーがオープンしました。
世界を舞台に挑戦を続けるコシノヒロコ。そのパワーの源泉がアーティストとしての活動です。幼い頃よりデッサンやドローイングに親しみ、常に絵筆と 離れることなく人生を歩んできた小篠ですが、これまで国内での発表の機会は限られていました。このたびヒロココシノ銀座店の開店に際し、多彩な画風を展開 する小篠弘子の作品をご紹介するギャラリーを併設することになりました。銀座の真ん中の地階にありながら、天井高は約6メートル、大きな窓からは自然光も 入る美術館のようなギャラリーです。
本格的に作品を発表する場を得た今、小篠は新人画家になった気持ちで創作活動に励んでいます。オープニング記念展の名称は、「小篠弘子 十八歳の眼差し」。この挑戦的なタイトルからも、新進気鋭のアーティストとしての意気込みと夢を感じていただけることでしょう。
WORK #916, 2012, 70×70cm
WORK #925, 2012, 70×70cm