数ヶ月毎にパリを訪れる小篠弘子は、ある日、黒田アキ(本名、黒田明比古)という人物に出会いました。黒田は小篠と同じく関西の出身(1944年、京都生まれ)で、パリ在住44年を越える現代美術のアーティストです。以前よりその名を耳にしていた小篠でしたが、黒田のアトリエを訪問し、その仕事の幅広さや奥深さ、多彩な交友関係を知れば知るほど驚きました。これ程までにパリという都市やフランス文化に溶け込み、活躍して来た日本人がいただろうかと。
黒田のアトリエは、エコール・ド・パリの芸術家達が集ったモンパルナス界隈にあります。仕事の合間に通うカフェで、黒田は様々な人に出会い、世間話をし、冗談を交わし、スケッチを描くのです。カフェはふと思いついたことを描きとめるのに一番適した場所であり、創作の原点でもあるのです。そんな黒田が長年取り組んできた「宇宙庭園=コスモガーデン」という概念はカフェから生まれたといっても過言ではありません。人と人が出会う場はとても重要であり、その出会いが作品を生み出して来たのです。広大な宇宙の中では小さな存在に過ぎない人間が出会い、思考し、行動し、互いに共生的な庭をつくっている。それが「宇宙庭園=コスモガーデン」だと黒田は考えているのです。
これまで数多くの出会いを経験し、その度に新たな世界を切り開いてきた小篠弘子にとって、こうした黒田の思考は共感できるものでした。すっかり意気投合した二人が一緒に展覧会を開こうと思い立つまでに多くの時間は要しませんでした。黒田アキにとって、今回の展覧会は日本における久々の本格的な発表の機会となります。小篠弘子という個性溢れるパートナーを迎え、いったいどのような「宇宙庭園=コスモガーデン」」を創り出すのでしょうか?二人の出会いが生み出す鮮烈なスパークにご期待下さい!
黒田アキ (本名、黒田明比古・くろだあきひこ)
1944年、京都府生まれ
黒田アキは1980年にパリ国際ビエンナーレに出品し、間もなくマチスやミロ、ジャコメッティを世に送り出したマーグ・ギャラリーと専属契約を交わす。ヨーロッパ各国で数々の個展を開催し、日本では1993年に東京国立近代美術館において、当時最年少で個展を開催。また翌年にはサンパウロ・ビエンナーレに参加し世界的な評価を受けた。安藤忠雄やリチャード・ロジャースといった建築家とのコラボレーションなど、他分野との交流も多いアーティスト。
小篠弘子
1937年、大阪府生まれ
祖父の影響で幼少時より美術や伝統芸能に親しみ、大阪府立岸和田高校在学中に美術部で絵画を学ぶ。高校卒業後に上京し、文化服装学院でデザインを学びつつ、スタイル画の大家、原雅夫氏に師事。デザイナーとして第一線で活躍する傍ら、水墨画や書画の制作に取り組んできた。近年はテキスタイルなどさまざまな素材を用い、新たな手法にも挑戦しつつ、表現の幅を広げている。